飲食店営業許可取得までの大まかな流れは以下のようになります。

開業場所の決定⇒保健所への事前相談⇒(店舗設計・内装工事・施設設備の完備)⇒飲食店許可申請⇒保健所による立ち入り検査⇒営業許可証の交付

〇開業場所の決定(地域による制限)

飲食店を開業する場所の決定に関しては、いろいろなケースがあると思います。自宅を改装して開店する場合や駅前などの商業施設が集まっている場所などに店舗となる物件を賃貸するケース、また住宅地や工場等が多い地域で開店するなど様々です。
まず、第一に注意しなければならないのは、飲食店の形態によっては、開店できない場所があるということです。

日本では都市計画区域という一体の都市として総合的に整備、開発、保全を行うための区域が定められており、その都市計画区域内には市街化区域(優先的に市街化を図る区域)が定められています。

市街化区域内はさらに13種類の用途地域というエリアに区分されています。例えば、専ら低層住宅のための地域や飲食店、銀行や映画館など商業施設が集まる地域、工業専用の地域などです。

先ほどの「専ら低層住宅のための地域(第一種低層住居専用地域)」では、店舗兼住宅としてのお店しか開業できず、かつ店舗部分(非住宅部分)の床面積の制限もあります。
「飲食店、銀行や映画館など商業施設が集まる地域(商業地域)」は飲食店の開業に制限はありません。また「工業専用の地域(工業専用地域)」では飲食店は開業できません。
特に、住宅地としての地域(「第一種住居専用地域」、「第二種住居専用地域」、「第一種中高層住居専用地域」、「第二種中高層住居専用地域」、「第一種住居地域」、「第二種住居地域」、「準住居地域」、「田園住居地域」))では、用途地域によって店舗の広さや建物の階数などの細かな制限があります。

用途地域はホームページで確認できますが、もしはっきりとわからない場合には、自治体の都市計画課などで図面閲覧も可能です。
(参考)都道府県別の用途地域マップ

また、それ以外にも上述の用途地区に重複して指定されている特別用途地区というものもあります。特別用途地区によっては飲食店の制限がある場合もあります。

〇保健所への事前相談

開業場所が決まったら、管轄の保健所に相談を受けるようにしてください。
営業許可申請の許可には営業施設の構造、食品の取扱設備、給水、排水及び汚物処理設備などにおいて細かな施設基準があり、また地域によってはその地域のルールがある場合もあります。必ず、事前に各自治体のホームページを確認するとともに、設計図面等がある場合にはできる限り持参し、相談を行うようにしてください。
(参考)営業施設の共通基準 大阪府

保健所への事前相談には、店舗の図面(特に厨房部分)のレイアウトを描いた平面図を持参するようにしてください。事前相談時点での平面図は、店舗全体のサイズや厨房のサイズ、厨房内の各種設備の設置箇所を明記したものです。事前相談ですので、この図面は概ねのもので大丈夫ですが、下記の設備は描いておくようにしましょう。

・調理台、洗浄シンク(2漕のもの)、食器戸棚、冷凍冷蔵庫、コンロ、換気扇、床排水溝、排水桝、従業員の手洗場、ゴミ容器等

特に、下記の点は事前に確認しておきましょう。

・洗浄シンクはお湯と水が出るか

・食器戸棚には扉がついているか

・冷凍冷蔵庫には外から見て庫内の温度がわかるようになっているか

・床排水溝や排水桝は床洗浄に適したものであるか

・従業員の手洗いはセンサー式かレバー式か等

排水設備にグリストラップが必要かどうかという問題ですが、飲食店のグリストラップの設置義務に関しては、はっきりと義務化がされていません。グリストラップとは厨房の排水内に含まれる生ごみや油などが直接下水道に流れてしまうのを防ぐ装置です。

     (山田清掃有限会社HP参照)

こちらに関しては、はっきりと義務化されてはいないので、設置しなくてよいと判断せずに、お店を管轄する保健所で事前に確認しましょう。お店で提供する飲食物を説明すれば、保健所で設置の可否を教えてくれます。ただ、賃貸テナントに関しては、オーナーがグリストラップの設置を希望される場合もありますので、賃貸オーナーの意向も確認し、設置の判断をするようにするのが良いと思います。

また、客席と厨房の境目がはっきりとしていることも求められますので、客席と厨房に段差がない場合などは、のれんを掛けたり、スウィング扉を付けるなどして、境界をはっきりさせておきましょう。ただし、のれんを掛けたりする場合には、消防法との兼ね合いありますので、防炎マークのついているもの(薄手のカーテンのようなもの)を設置するのが良いでしょう。

〇飲食店営業許可申請

保健所からのアドバイスを受け、施工業者等との打ち合わせも進み、許可申請に耐えられると思われる設計ができ、設備、内装工事や備品の搬入・設置が終わったら、いよいよ営業許可の申請です。
飲食店営業許可申請には以下のような書類の提出が必要になります。

飲食店営業許可申請には以下のような書類の提出が必要になります。
 ・営業許可申請書 1部
 ・営業施設の構造及び設備を示す図面 2部
 ・食品衛生責任者の資格を証する書類
→(参考)営業許可申請書(大阪市)
→(参考)営業施設の構造及び設備を示す図面[固定店舗](大阪市)

食品衛生責任者の資格を証する書面とは、前回のブログでふれた「栄養士、調理師、製菓衛生師などの有資格者の証明」や「食品衛生責任者養成講座の修了証」などです。開業するお店に調理師免許等を持っている方がいない場合には、申請までに養成講習会を受講しておきましょう。

養成講習会は、今日受講申し込みをして、明日受講できるというものではありませんので、日程と場所をよく確認して、申請に間に合うように受講するようにしましょう。

また、受水槽や井戸からの水を使用する場合には、水質検査成績書の提出が必要です。比較的古く、また5階以上のマンションなどでは、受水槽式で給水を行っている場合などもありますので、必ず賃貸仲介等の不動産屋さんなどに確認しましょう。受水槽式を採用しているビルの一部などを店舗とする場合には、管理会社に水質検査成績書を出してもらいましょう。

飲食店の営業許可申請には手数料が必要です。新規開業の場合は16,000円(固定店舗・大阪府)となっています。

〇保健所による立会検査

飲食店営業許可申請提出後に保健所による現地立会検査があります。ですので、お店の設備、内装工事や備品の搬入・設置は営業許可申請までに完了をしておきましょう。

当然、保健所の方はお店が開業できる準備が整っているものとして立会検査を行いますので、すべての設備・備品が使える状態にしておくとともに、冷蔵庫に電源を入れておいたり、消毒液や手拭きペーパーの設置など細かな部分まで事前にチェックを行い、準備をしておいてください。例えば、従業員の手洗い場に洗浄液がなかったり、2漕シンクの食器洗い場には洗剤、そして近くに詰め替えを置いておくようにしたり、お店の清掃道具を一か所にまとめておいたりなどにも気を配っておきましょう。

〇営業許可証の交付と掲示

保健所による施設検査に問題がなければ、営業許可証が交付され営業開始ができます。営業許可証の交付までは多少時間がかかりますので、保険所の担当者から、明日から営業してもよい旨のお話があることが多いです。その後、営業許可証を取りに行ったら、お店のよく見える場所に掲示しておきましょう。

⇒飲食店営業許可申請に関するご相談は、加賀田行政書士事務所まで。