2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」となり、海外からの観光客や国内の旅行者も急増しています。大阪においては、USJの来場客も急回復し、また2025年の関西万博、それに続き統合型リゾート(IR)を核とした国際観光拠点の形成を計画するなど、今後も海外、国内からの観光客は増え続けるものと思われます。
しかし、旅行者が増えるということは大阪だけでなく近隣の京都府や奈良県、そして兵庫県にとっても同じでしょう。
今まで、このブログでは住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊と国家戦略特別法に基づく民泊(特区民泊)について説明をさせていただきました。
そのうち、特区民泊は国で特別に指定されている区域において、365日(1年)民泊を営業できる制度でしたが、京都府や奈良県、兵庫県内には特区民泊として営業できる区域は定められていません。では、特区民泊として指定されていない区域で365日(1年)営業するにはどうすればよいでしょうか。
〇簡易宿所とは
特区指定のされていない区域において民泊を開始する場合には、次の2つの方法があります。
①住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊の届出を行い、1年間で180日の限度内で営業を行う。
②旅館業法に基づき簡易宿所としての許可を受け、1年間限度なく(365日)営業を行う。
旅館業法にはホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4形態が規定されており、簡易宿所営業は、「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの」(旅館業法2条4項)とされており、2段ベッド等を設置している施設やカプセルホテル、民宿などもその範疇に入ります。
当然、②の簡易宿所は365日営業が可能ですので、①の住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊よりも大きな売り上げを確保できる可能性が高いといえます。
なお、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊は、下記のブログで詳しく説明していますので、そちらをご確認ください。
〇簡易宿所営業を行う施設の構造設備に関する基準
建物の構造や設備に関して、旅館業法に則って民泊営業を行うには旅館業に関する法令のほか、各自治体が定める条例によって規制を受けますので、ここでは、奈良県を一つの例にとってざっくりとご説明します。他府県においても基本的な部分においては大きく変わりがないと思いますので、ご参考までにご確認ください。
1.客室の床面積は33㎡以上(宿泊者の数を10人未満とする場合には、3.3㎡に宿泊者の数をかけて得る数字)
→奈良県では、上記旅館業施行令の規定の他、条例によって、10人以上とする施設においては、2.4㎡について一人としています。また、階層式寝台を設置する場合には、床板面積1.6㎡について一人とされています。
2.階層式寝台(2段ベットなど)を有する場合には、上の段と下の段の間を、概ね1m開けること。
3.換気、採光、照明、防湿、排水の設備を有すること。
4.宿泊者の需要を満たすに足りる規模の入浴設備を有すること。(近隣に公衆浴場があるなど入浴に支障をきたさないと認められる場合を除く)
→奈良県においては条例で共同用の浴室やシャワー室が設置されている場合の基準などが定められています。
5.宿泊者の需要を満たすに足りる規模の洗面設備を有すること。
→奈良県では、トイレと洗面設備が隣接している場合には、扉等で区切ることを義務付けています。
6.適当な数の便所を有すること。
→奈良県においては、条例(「奈良県旅館業の業務の適正な運営の確保等に関する条例」)において「衛生措置の基準」を定め、定期的な清掃やねずみ、害虫の駆除、給水設備の定期点検などの他、入浴設備の設置条件、洗面所、トイレ等のへの規定を細かく定めていますので、必ず詳細を確認するようにしてください。
7.玄関帳場について
→奈良県では条例によって、簡易宿所においても、「玄関帳場等」またはそれに代替する機能を有する設備を設置し、事故の発生時などへの緊急時の対応ができることを求めています。また、玄関帳場を経由することなく、直接旅行客が客室へできる構造を禁止するとともに、ロビーや玄関広場がある場合には、玄関帳場に接続していることを求めています。
8.その他
→奈良県ではその他事項として、一定の地域内においては、施設の外壁や屋根などの外観を周囲の善良な風俗を害せず、かつ周囲の環境に調和するものであることが求められているとともに、浴室又はシャワー室の外から見通すことができない構造であることや動力により振動や回転するなどのベッド等も禁止されています。
※一定の地域:一定の官公庁施設、学校、図書館、児童福祉施設、病院などや都市計画法により定められている商業地域(風致地区を除く。)を除く県の全域を指します。
それ以外に、奈良県においては条例で営業者の努力義務として、外国語等による情報の提供や施設の設備の使用方法や移動のための交通手段に関する外国語を用いた案内等、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置を講じることとされています。
その他にも、県の条例によって細かな規定が定められていますので、必ず確認をするようにしましょう。
次のブログでは、簡易宿所の営業許可までの流れについてご説明します。
→旅館業法に基づく民泊(簡易宿所)の営業許可までの流れについて
⇒民泊開業についてのご相談は、関西民泊開業支援センターまで。