〇住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊とは
以前から世界各国において観光やビジネス利用として民泊の広がりがありましたが、旅行者と宿泊場所提供者をつなぐWebサービスであるAirbnbが平成26年日本に本格参入し、我が国においても空き部屋を旅行者に貸し出す動き(シェアリング)が急拡大しました。
しかし、住宅などを旅行者に貸し出すことによって起こる騒音やゴミ出しなどの近隣とのトラブルが発生し、宿泊場所の衛生面や安全面を保つことの必要性、また観光旅行者の宿泊ニーズの多様化に対応することを目的として、平成29年6月に健全な民泊サービスの普及を図るため「住宅宿泊事業法(民法新法)」が制定されました。
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊は、住宅を宿泊場所と位置づけることによって、いわゆるホテルや旅館などを設置することのできなかった住宅地においても、旅行者を宿泊させ、宿泊料を受領するビジネスを展開することが可能となっています。(一部の自治体では条例によって規制されている場合もあります。)
〇住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊数の動向(全国と大阪)
・全国の状況
民泊新法に基づく民泊の届出数は、住宅宿泊事業法の制定(平成29年6月)から急増しましたが、新型コロナ感染者が日本において初めて確認され急拡大を見せた令和2年初春を境に事業廃止件数も増加、その後、コロナ感染者数の収まりとともに事業廃止件数も鈍化を見せ、令和5年秋頃にコロナ感染症拡大前の届出住宅数(廃業していない民泊住宅数)に戻ってきています。
・大阪の状況
大阪市においては、届出住宅数の回復は遅れている状況で、令和1年10月時点で2677件であった届出住宅数(廃業していない民泊住宅数)は、令和5年9月の時点においても1595件でした。
コロナ禍前(令和1年通年)の来阪外国人観光客は1230万人でしたが、大阪府市と関西経済3団体では2025年には1500万人を見込んでいます。また、大阪万博においては、日本人を含む来場者数を2820万人(そのうち約350万人をインバウンド客と見込む)としており、今後、日本人を含めた大阪への旅行者が急増すると言えるでしょう。
現在、大阪においては、ホテルの開業、着工予定が目白押しですが、ホテルだけでは来阪宿泊者のすべてをカバーできるわけではありませんので、今後も民泊の需要が一層高まってくると予想されます。
〇住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊の種類
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊は、180日泊を年間の提供日数の上限と定められています。
また、その運営方法には「家主居住型」と「家主不在型」の2種類があり、各々の運営に対する法規定が異なります。
「家主居住型」は読んで字のごとく家主(民泊サービス提供者)が実際に居住している住宅の一部を宿泊場所として提供します。住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等)は家主の義務とされています。
「家主不在型」は家主が民泊として提供する住宅に住んでいない状況を指しますが、何かあった場合には、民泊提供場所に駆けつけて対応を行う必要があります。これは24時間いつでも対応をしなければなりません。
ですので、「家主不在型」の民泊では運営代行などを行う者(住宅宿泊管理業者)への委託が義務付けられており、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置や何かあった場合の対応を行わなければなりません。この管理委託は管理業者に一部を委託し、一部を自ら行うというのは認められていません。管理業務のすべてを委託する必要があります。
この住宅宿泊管理業者に関して、今まで宅建業者か不動産業者の人しか取得できなかったため、上記のように委託義務がありましたが、令和5年7月に法改正があり、27時間の登録実務講習を受講し修了した場合には誰でも取得できる制度を整えました。
27時間の実務講習は、対面やオンラインによる講義27時間もしくは通信講座(冊子等による自宅学習)20時間程度+対面やオンラインによる講義7時間で実施されます。この実務講習を実施する機関を、令和5年8月から国土交通省が募集中であり、現時点(令和6年1月時点)では登録実務講習実施機関はありませんが、近いうちに、実施機関が選定され、実務講習会の開催が始まるものと思われます。
〇住宅宿泊事業者に義務付けられている事項
住宅宿泊事業者には事業を適正に遂行するために、以下の措置が義務付けられています。
(1)宿泊者の衛生確保の措置
(2)避難機器設置等の安全確保の措置
(3)外国語による施設利用方法の説明
(4)宿泊者名簿の備付け
(5)騒音防止等、必要事項の宿泊者への説明
(6)苦情等の処理
(7)契約の仲介を委託する場合、登録を受けた旅行業者又は住宅宿泊仲介業者への委託
(8)標識の掲示
(9)年間提供日数の定期報告
「家主居住型」の事業者は、自らが義務事項を行い、「家主不在型」の事業者は、住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。
次のブログでは民泊を行いたいと考えている方に、もう少し具体的に注意事項や届出等について説明します。
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