開業直後には多くの出費が必要であるとともに、事業が軌道に乗るまでは売上も安定しないことも多く、資金繰りに悩むことがあると思います。
ここでは、資金調達の手段としての補助金や助成金の活用についてご説明します。補助金や助成金は融資と異なり、原則として返済の義務はありません。会社が営む事業に補助金や助成金がないかを調べ、検討することもとても重要です。
☆このページのPoint
〇開業時に使える補助金にはどのようなものがあるのか
〇どのような概要で、どんな採択事例があるのか、また採択率は?
補助金・助成金とは
補助金・助成金には大きく分けて概ね下記のものがあります。
・国によるもの
・地方自治体によるもの
・民間団体や企業によるもの
補助金、助成金は同じように感じますが、補助金は会社設立の前後で活用できるものはありますが、助成金は設立前後で使えるものはほぼありません。また、助成金は条件を満たせばほぼ100%交付されるのに対し、補助金は採択される件数や予算も決まっており、必ず受給できるものではありません。
ここでは、いくつかの補助金について簡単にご紹介します。
〇開業時に使える代表的な補助金(国)
①小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直す経営計画を作成し、販路の開拓や生産性の向上の取組みを支援するもので、補助上限額は50~200万円となっています。
補助対象は店舗の改装、広告掲載、展示会出展費用などで、補助率は原則2/3(出費した経費の2/3が補助される)です。
例えば、小規模事業者持続化補助金のリーフレットにはこのような活用例が記載されています。
(事例)
蕎麦屋が地元特産のかき揚げをセットメニューに追加するため、高性能フライヤーを
導入。新規顧客の増加、顧客単価アップを目的として地元メディアに広告を出稿。
※緑字が小規模事業者持続化補助金の対象経費
令和5年3月10日から募集を開始し、令和5年9月7日に第13回公募分を締め切った小規模事業者持続化補助金の採択者一覧にリンクを張っていますので、ご自身の事業で補助金申請につなげることができないかの参考になさってください。
ちなみに、この第13回の募集に対し15,308件の応募があり、8,729件が採択され57.0%の採択率でした。
②ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス向上促進補助金)
ものづくり補助金とは中小企業などが生産性を向上させるために行う革新的なサービス開発や試作品の開発、生産のプロセスの改善を実施するための設備投資を支援する補助金を指します。
“ものづくり”からは工場等を持つ製造業をイメージしがちですが、小売業や卸売業、サービス業など、どの業種でも申請が可能です。また、創業直後、また社員がゼロ(役員だけで運営しているようなケース)でも申請できます。従業員が5人以下の場合、補助金額の上限は750万円となります。このような小規模な事業者の補助率は優遇されており、通常枠の場合、2/3(出費した経費の2/3が補助される)となります。
令和5年4月19日から7月28日までの期間に公募のあった第15回ものづくり補助金の結果は、5694件の申請に対して2861件の採択(採択率50.2%)でした。製造業の応募・採択が多いようですが、中には、障碍者向けの短期入所施設のフランチャイズ展開や動物病院のデジタル化、大学や専門学校用のAI予測モデルの開発などの採択もあるようです。
③IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などが生産性の向上のためにITツールを導入する経費の一部を補助するものです。IT導入補助金は開業後すぐにでも申請が可能であり、会社などの法人だけでなく、個人事業主でも問題はありません。
IT導入補助金を活用して顧客動向を把握するための顧客管理ツールを導入したり、在庫管理システムや従業員の労務管理のシステムを導入したりと幅広く補助金の申請が可能です。具体的には飲食業でPOSレジ・オーダーシステムを導入した例、訪問介護、居宅介護事業を営む会社が事務作業の効率化のためにITツールを導入した例や建設業を営む会社が原価や予算実績管理等の業務の見える化を進めるためにITソフトを導入した例、公認会計士事務所が顧客管理の簡素化、従業員との共有化のためにITツールを導入した例などがあるようです。
IT導入補助金は大きく3枠に分類され、最大450万円の補助があります。
・通常枠(A類型、B類型):業務効率、売上向上に役立つITツールの導入
・デジタル化基盤導入枠:会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECサイトなどインボイス制度も見据えたデジタル化の推進
・セキュリティ対策推進枠:セキュリティ対策を強化するためのITツールの導入
枠によって採択率の差はありますが、2022年度では平均の採択率は70%を超えており全国で51889件が採択されています。特にデジタル化基盤導入枠の採択率は80%超であり、IT導入支援事業者からの支援を受ける、導入するソフトを購入するためパソコンを購入するなどの条件を満たせば、上限金額はありますが、パソコンやタブレット端末の導入にも補助金が交付される可能性があります。
④事業再構築補助金(成長枠)
事業再構築補助金は、経済状況の変化などによって売り上げや利益が減少した中小企業や個人事業主を対象とした補助金制度ですが、令和5年6月に締め切った第10回公募から売上高の減少という条件が撤廃されたため、開業後間もない事業者でも申請が可能となりました。
なかでも、事業再構築補助金の成長枠はこれから成長が見込める分野(市場)で事業を行う予定である会社でも利用することが可能です。これから成長の見込める分野は「成長枠対象業種・業態リスト」が定められていますので、そちらをご確認ください。
事業再構築補助金(成長型)では、従業員が20名以下の場合100万から2,000万円の枠内で補助され、補助率は中小企業等で1/2となっています。(ただし、大規模な賃上げを行う場合には2/3)また、第10回公募の採択率は45.4%でした。
〇開業時に使える代表的な補助金(大阪府)
①大阪起業家グローイングアップ補助金
これは大阪府が将来的に大阪経済を担う有望な起業家(大阪府内で起業するものに限ります)を対象に、ビジネスプランコンテストを実施し、優秀者に補助金を交付するものです。補助金額は3年間を限度とし、1年あたり100万円を上限としています。また補助率は毎年度の補助対象経費の1/2以内となっています。
対象となる補助経費には創業等に必要な経費としての開業費、事務所賃料・共益費や仲介手数料、機械装置・工具備品設備費、外注費・委託費・技術コンサルタント料、謝金、補助員人件費、広告宣伝費等幅広く対象となっています。
採択枠が少し少ないので難関の補助金かもしれませんが、大阪経済発展につながる斬新な起業アイデアをお持ちの方はチャレンジすることを考えてはいかがでしょうか。
→大阪起業家グローイングアップ補助金の概要(大阪府ホームページ)
その他、大阪では様々な補助金があります。例えば大阪府内で来阪旅行者の利便性や快適性向上のための受入対応強化の取組みを支援するための「大阪府宿泊施設の環境整備促進事業<補助金>」の制度は、インバウンド受入対応のための多言語対応やタブレット端末等の補助機器の導入、Wi₋Fiの整備や洋式トイレの増設、キャッシュレス端末機や宿泊予約システム・ホテル管理システム等の導入などに対し、上限200万円(補助率1/2以内)の
補助金を交付しています。
〇開業時に使える代表的な補助金(大阪各市)
また、各市においても地域経済の活性化のために創業当初から活用できる補助金がありますので、事業所の所在する地方自治体の補助金もいろいろ調べてみましょう。
(大阪府内の市町村が展開している補助金例)
・テイクオフ補助金制度(枚方市)
創業初期の中小企業者に対して、事務所等の用に供する建物の賃借料を補助
・創業促進事業補助金(茨木市)
茨木市内の商工業の振興と地域経済の活性化を図るため、初めて事業を始める方・始めた事業を拡大する方への「改築・改装工事費」「テナントの賃借料」「法人設立に要する経費」に対する補助金
⇒会社設立・補助金に関するご相談は、加賀田行政書士事務所まで。