☆このページのPoint
〇定款に記載することによって効力が生じる相対的記載事項とは
〇変態設立事項とは、会社が不利益にならないように記載するもの
〇決算の公告は義務、そしてその方法
〇小さな会社設立では、あえて記載しなくてもよいものもある
〇相対的記載事項とは
会社を設立する際の定款には、必ず記載しなければならない絶対的記載事項のほかに相対的記載事項(記載がなくても定款は有効ではあるが、定款に記載しておかなければ効力が認められない事項)を記載することがあります。
相対的記載事項には、「変態設立事項」、「公告の方法」が挙げられます。
1.変態設立事項
変態設立事項とは発起人がわざとした行為によって、会社の財産が危うくなったり、特定の人が会社の設立によって利益を得ることがないように、以下の4つの事項に対して(株式会社が不利益にならないように)定款に記載するものです。
① 現物出資
② 財産引受
③ 発起人の報酬
④ 設立費用
① 現物出資とは会社を設立する際に、資本金の一部を金銭以外の財産(例えば自動車や土地、建物など)でする出資のことをいいます。発起人以外が現物出資をすることはできません。現物出資も出資に変わりがありませんので、それに相当する割り当て株数を定めることによってその効力が認められます。
(定款の記載例:現物出資)
第〇条 当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産、その価額及びこれに対して割り当てる株式の数は、次のとおりである。
1 出資者 発起人 〇〇〇〇
2 出資財産及びその価額
普通自動車(日産 △△ 令和□年式 車体番号 □□□□) 1台
金 〇〇万円
3 割り当てる株式の数
〇〇株
② 財産引受とは、会社の設立時に必要な財産や物品などを、会社が成立することを前提条件として、特定の財産を譲り受ける(買い受ける)ことを約束する契約行為のことをいいます。
例えば、会社が設立したら、第三者の〇〇さんから、その所有している不動産(例えば建物など)を買い受けることを契約することなどが該当しますが、小さな株式会社を設立する場合、定款(いま説明している会社の設立時に作成する定款)に財産引受を記載するようなケースはほとんどありません。会社設立後に、譲り受けても同じことだからです。
③ 発起人の報酬とは、発起人が会社を設立するまでに骨を折った労力に対して報酬を支払う場合に、定款に記載することになりますが、こちらに関しても、実務ではあまり記載するケースはありません。
④ 設立費用とは、会社の設立事務の執行のために必要な費用のことをいいます。定款に記載することによって設立後の会社に請求することができます。設立事務所の賃料、設立時の事務員の給与等が該当しますが、定款の認証費用といった会社に損害を与える可能性のないものは除きます。しかしながら、小さな株式会社を設立する場合には、こちらもほとんど記載することはありません。税務上、設立後に「創立費」として経費とすることが認められていますので、発起人の自己負担とはならないからです。
2.公告の方法
株式会社は定時株主総会(会社設立後、毎事業年度が終了した際に、一定の時期に招集される株主総会)の終結後、決算の公告(特定の利害関係者に限らず広く会社の情報を公開すること)を行わなければなりません。これは会社法という法律で定められていますので、中小企業といっても公告を行わないことは、法律に違反することになります。
公告の方法には、①官報(日本政府の発行している機関紙)に掲載する方法、②日刊新聞紙に掲載する方法、③電子公告(会社のホームページなど、電磁的方法を通じて行う方法)の3種類が認められています。
定款に定めを置いていない株式会社では、①の官報が公告方法となります。上場(株式を証券取引所で売買できるようにすること)していない会社は官報を選び、定款にも記載するというのが一般的です。
(電子定款による公告の記載例)
第〇条 当会社の公告は、電子公告の方法により行う。ただし、電子公告によることができない事故その他やむを得ない事由によって電子公告ができない場合が生じたときは、○○(例えば官報)に掲載する方法により行う。
ここまでが、相対的記載事項の説明です。次に任意的記載事項について説明しますね。
→会社設立に関するご相談は、加賀田行政書士事務所まで。