前回のブログ「相続人のいない借地権①」でふれたように、地主さんの土地上に相続人がいるのかいないのか不明な建物が建っており、その土地はかなり昔に結んだ土地賃貸借契約書(借主はすでに亡くなっている)がある場合、地主さんはどう対処すればよいのでしょうか。
相続人の調査
借地人がお亡くなりになった場合には、その相続人から地主さんに連絡が入るのが普通ですが、全く何の連絡もなく、地代も未納になっている場合には、相続人の調査から始めます。
借地人のご家族や親せきなどがわかっている場合には、その方に連絡をして調査をしていくことになりますが、中には、相続人が判明しないこともあります。地代が支払われていないような場合には、地主さんは債権者となりますので、債務者の相続人調査を依頼できる専門家(弁護士、行政書士等)に依頼をして相続人の調査をするのが良いでしょう。
相続人が判明した場合には、その方に対して未納の地代の支払いなどを請求していくことになります。
相続人のいない場合
相続人がいなかった場合、亡くなった人の財産は法人化されます。(この相続財産法人とは、法定相続人がいない場合や、相続放棄された場合に財産を法人化することをいいます。)
そして、家庭裁判所に地主さんが「相続財産管理人」の選任の申し立てを行うことができ、相続財産管理人は、この相続財産である借地権の整理を検討することになります。借地権を整理する順位としては、①内縁関係等の特別縁故者、②共有者がいる場合にはその共有者、③国庫の順になります。
「相続財産管理人」はこの借地権を管理し、売却などをしてお金に換えることを進めます。売却できた場合には、地主さん(債権者)に弁済等の清算を行い、余った資産は国庫に帰属させます。相続財産管理人が第三者に借地権を売却する場合には、地主さんの承諾を得る必要がありますので、地主さんはそれを応諾するか、拒否するかを回答する必要があり、応諾した場合には、譲渡を受ける(買い受ける)第三者と地主さんが賃借人と賃貸人の関係になります。
反対に、地主さんが借地権の解消を望み、土地の完全な所有権を取り戻したい場合には、「借地権の買い取り」を相続財産管理人に打診することも可能です。
ただ、相当の期間、借地人が地代を滞納していたような場合には、契約不履行にあたるケースも考えられますので、相続財産管理人に対して借地権の契約解除を主張して、建物の収去と土地の明け渡しを主張することを求めることもできます。このような場合、借地権の契約解除の有効、無効の争うことになることもあります。
相続財産管理人の申し立て
この「相続財産管理人」の選任の申し立てには、亡くなった方のすべての戸籍謄本や相続人の戸籍謄本、相続人が相続を放棄した場合などは、その証明書などの種々の書類が必要になります。また、財産を管理する費用や相続財産管理人の報酬引き当てに充てるための予納金が必要となります。
上記のように相続財産管理人の選任の申し立てを行う場合には、弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。
いずれにしましても、借地権の相続があった場合には、借地人さんも地主さんも相続関係を明確にし、登記をしていくことが、後々のトラブルを回避するために重要になります。また地主さんは借地人さんが亡くなったことを知った時や、借地人さんが地主さんが亡くなったことを知ったときには、仮に地代が支払われていた、支払っていたとしても、当該不動産の所有権の移転登記をしていただくようお願いする方が良いと思われます。
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