借地権とは
普段、家を借りたり、買ったりする場合において、借地権について聞くことはあまりありませんが、実際には、借地権に基づいて家を所有し、そこに居住しているケースが結構あります。
借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権」と定義されています。この定義で、“土地の賃借権”はお金を払って土地を借りることだとわかりますが、“地上権”とは何かというと、他人の土地を使用できる権利で、借りるお金に関しては定めがありません。しかし、一般的に“借地権”というと、“賃借権”のことを指すと考えて問題ありません。
また、“建物の所有”とありますので、建物の所有権は借地権者(借地権を持っている人)にあるということです。
通常、家やマンションの一室を借りる(賃借する)場合には、その家やマンションの一室に係る土地や建物は、家主さん(マンションの場合区分所有ですので、土地の持ち分になります)の所有するものを借りるのですが、“借地権”の場合には、建物の所有権の所在の点で通常の賃貸とは異なるということです。
この場合、家を所有する権利と土地を借りている権利は、“借地権者”のものとなります。また底地を所有する権利は“地主さん(借地権設定者)”のものとなり、建物の所有権の登記は“借地権者”名でなされ、土地の所有権の登記は“地主さん(借地権設定者)”名でなされます。
借地権の割合
一般的には、土地に関しては、建物を建てて住んだり、農作物を生産したりしてこそ、その利用価値があると考えられます。つまり、その利用についてはお金に換算できるということです。
仮に、借地権などの権利の全くついていない土地(2,000万円相当)と建物(1,000万円相当)の所有者が土地と建物を売却する場合、各々100%が所有者の取得できる権利となるのは当然です。
しかし、建物の所有者は借地権者であり、地主さんと土地の賃貸借契約を結んでいる場合、借地権者が土地の値段の何パーセントまでが借地権(土地を利用する権利)に相当するのかというのが「借地権割合」になります。借地権者は“地代”として土地の利用料を支払っているので、当然、借地権割合に相当する価格の権利を持っているということになります。
借地権は財産の一つとなります。ということは、その土地を利用する権利も売買でき、お金に換えることができるということです。借地権を売買する場合には、あまり明確な相場というものは存在しませんので、常識的な範囲において売主と買主の合意によって決めればよいのですが、財産ということは相続の対象になるもの⇒国が相続税を課税する対象になるものとなりますので、国の方では借地権の割合割合を定めています。(この割合に則って相続税が計算されます。)
国が定めている借地権割合は「路線価図」に記載されています。路線価図は国税庁のホームページに掲載されていますので、誰でも確認することができます。普通の住宅地の場合は60%~70%で設定されていることが多いようです。(ただし先ほども書いたように、通常の売買の場合には、この路線価図の借地権割合で売買しなければならないわけではないので、一つの目安として考えてください。)
⇒路線価図
借地権に相続が発生した場合
借地権は財産なので相続が発生した場合、当然相続の対象となりますので、建物の所有権者が変わり、相続人が借地権者の地位を相続します。つまり、借地契約上の賃借人の地位を継承するということになります。
土地を借りていた借地権者が亡くなった場合に、地主さんから土地を返してほしいと要求されても、必ず土地を返さないといけないわけではありません。またそれは、相続人が被相続人と同居をしておらず、その土地や建物を使用していなくても同じです。
ただ、相続ではなく遺贈(被相続人からの譲渡)の場合には、少し違ってきます。その場合には、地主さん(賃貸人)が承諾する必要があり、承諾料が発生する可能性が高いので注意しましょう。
借地権を譲渡するときの承諾料は、概ね借地権の価格の10%前後が一般的であるようです。
例えば上の例で挙げた2000万円相当の土地を借地権として賃借し、その借地権割合(路線価)が70%だとすると、2000万円×70%×10%=140万円となります。結構高額な金額ですね。
ただ、これは必ずこの金額でないといけないという数字ではなく、一般的な計算ですので、地主さんと話し合いによっては、変動する可能性もあります。
地主さんが亡くなった場合
次に、地主さんがお亡くなりになった場合にはどうなるかということですが、当然、地主さんの相続人が土地の所有権を取得し、土地の賃貸借契約上の賃貸人の地位を継承します。なので、契約内容の変更等もありません。
借地権は売ることができるのか
借地権は財産なので、売ることも可能です。ただし、地主さんの許可が必要になってきます。相続が発生した場合に借地権を売るケースも多いです。おそらく、ほとんどの土地賃貸借契約書には、売却や譲渡する場合、また増改築する場合には、「賃貸人の承諾を得ること。」という文言が記載されているはずです。
つまり、地主さん(賃貸人)の承諾を得ずに、売却や譲渡、増改築を行った場合には、契約を違反したことになり、借地権の明け渡しを求められるケースがありますので、十分に注意が必要です。
借地権を相続する場合の注意点
いままで、土地や建物などの不動産を相続で取得した場合においても、その所有権を法務局で登記をしていないケースが多くありました。ただ、今年(令和6年)の4月に相続申請が義務化されましたが、ご存じない方も多いと思います。
では、借地権の相続(土地の賃貸借契約の継承と建物の所有権の移転)が発生したときに、土地の賃貸借契約書は、例えばおじいちゃんの名前のまま、また建物の所有権の移転登記もしていない場合だった場合、どのような問題が発生する可能性があるでしょうか。
このような状態のままの間に、地主さんが第三者に土地を売却したとすると、第三者に対する対抗要件(当事者間で成立した権利関係を第三者に対して主張するための法律要件)を備えていませんので、その第三者から出ていくように要求された場合には、出ていかなければならないことになります。
先ほど、借地権の相続があった場合に、売却するケースも多いと書きましたが、地主さんがお亡くなりになった場合においても、地主さんの相続人がその土地を売るケースも多いのです。
このようなことが起こらないように、法律でも義務化された相続の申請、つまり建物の所有権の移転登記を行っておきましょう。これが、日本の登記制度には「公信力」はないけれど「対抗力」はあるということなのです。
つまり、
公信力がない・・・法務局に登記されている所有権者がおじいちゃんのままであるが、本当は子供に所有権は移っている
対抗力はある・・・登記をしておけばその権利は守られる
なので、「借地権も財産なので、建物登記をしていないと、その権利は守られませんよ!」ということです。
このように、意外と借地権の相続が発生した場合においても、そのまま放置しているケースも多く、後々になってトラブルになるケースもありますので、注意してください。トラブルになった場合には、弁護士さんに相談する必要がありますが、現在、土地賃貸借契約をしているが、相談したいことがある場合には、是非、専門の行政書士にご相談ください。
⇒不動産や相続について、相談したいことがあるときには、加賀田行政書士事務所まで、ご連絡ください。